朝日新聞 夕刊 H12.10.31 

体系化したい「公益学」 確立めざし大学開校へ


【テーブルトーク】

慶応大教授
  小松隆二(61)

(東京・三田で)


 社会政策を専攻し、大杉栄の研究でも知られるが、近年は「公益学」なる新しい学問を提唱している。さて、そのこころはー。   
 「資本の論理や市場原理によらず、『世のため人のため』に考え、行動する非営利の思想や活動、組織や制度を研究する学問です」

 地域の清掃奉仕や子供会活動、リサイクル 運動、各種のボランティア活動など日常至るところに、多くの公益的な活動がある。1998年にNPO法(特定非営利活動促進法) が成立し、様々な活動に従事する非営利団体も増えている。総理府の社会意識調査でも、「社会のために役立ちたいと思っている」と答える人が、83年の43%から、98年には62%へ増加した。営利を目的とする企業でさえ、環境保全部や社会貢献部などの公益部門を設けたり、社員にボランティア活動を奨励したりするところが出てきた。
  
 「公益がかつてなく関心を集めつつある。 企業も社会との調和のために公益活動を無視できなくなっている。しかし、こうした活動はこれまで、きちんと記録にとられることも、経済統計に反映されることもなく、学問 の対象になりにくかった。それを総合的に研 究し、体系化しようというのが狙いです」

 4月に『公益学のすすめ』(慶応義塾大学 出版会)を出し、環境、医療、社会福祉、学校、科学技術、労働組合などを「公益」の視点から問い直した。各方面から反響があり、早くも5月に「日本公益学会」の創立大会を開いた。人文・社会・自然科学の研究者や非政府組織(NGO)の活動家ら120人が参加。11月には、企業の社会的貢献や倫理について討議する第一回大会を開催する。のみならず、来年4月、山形県酒田市に、公益学の確立をうたう東北公益文科大学を開校、自ら学長に就任する予定でもある。新しい学問 の門出は順調のようだが、「世界で初めての試みで、『公益』にふさわしい外国語も見当たらない。模索段階だが、『公益』を国際語にするぐらいにしたい」   (洋)


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