◆私の読書◆
資生堂会長 福原 義春
小松隆二著「公益学のすすめ」
〜 社会貢献を数値で評価する 〜
| 思い起こしてみても「公益学」と云うことばを聞いたことがなかったような気がする。世のため人のためにすることが”学問”になると云うことなのだが、今日もっとも大切なNPOやボランティアなどの活動のもとになる公益原理を体系化しようとする試みだ。
現代の営利企業は社会の中にあって社会との何らかの関係を持たなければ存在し得なくなっている。そのことは誰にでも判っているが、それでは社会に公益を実現したとしてもそれを定量的に評定し、評価する方法が見出されていない。それが営利企業の行動のジレンマであり、それを経済的評価より次元の高い「志」 「理念」の名のもとに解決するしかないのだ。 一方時流に乗った企業は理念も公益も省みず、まっしぐらに拡大再生産に走っていくのだが、社会の他者を視野に入れずにひたすらに驀進(ばくしん)するなら、落とし穴があっても止まることができない。 また企業や個人の社会貢献、環境 保獲、教育、医療、福祉活動やNPOとよばれる非営利の社会活動、また職業を通じた世のため人のための活動などについては、夫々(それぞれ)の分野で狭く深くは考えられて来たが、総合的な視点で考えられることがなかったのが不思議とも思える。 「一つには経済活動が日々のコン ビニやスーパーなどでの一人一人の小さな買い物まで消費行動の一環と して統計的にも集計・記録・分析されるのに、非営利の公益活動の方は、 原点ともなる日々の一人一人の成果などを見ても、記録も集計もされる 部分が少ないという認識にあった」 と著者は云う。 それが社会の全般に対しての活動であったとしても、GDPの統計数値にあらわれてくるのはごく一部である。ましてやこのような運動や組織の活動は特定層に向けられることが多いので把握が難しい。 公益活動を目的とするようなN POの発展を傍目に見て、資本主義経済下の株主総資本の増大と社会性をどう調和したらいいのかと考え込むのは一部の変わり者だけだ ろうか。 そのあたりを解くために著者は公益学という分野に挑戦し、公益学会の発起人になったのだという。その意気に感じ、この本をテキストとして学び、実践していきたい。=慶応 義塾大学出版会刊行 |
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