新世紀リードする公益学
〜 社会に何ができるか探究 〜
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『提言』
日本女性技術者フォーラム運営委員
大島 美恵子 |
| 新緑の五月、公益学という耳新しい学問を研究する日本公益学会が東京で産声をあげた。来春庄内に、東北公益文科大学が
発足することでもあり、公益学とその教育について説明してみたい。
公益学は、人間がよりよく生 きていくため、必ずしも利益利潤を生むとは限らない行動や思想について総合的に研究する学問である。 20世妃は、資本と市場原理を追求する学問、研究が進み、それに伴って人々の思想も、効率がよくて強いものをよしとする風潮が生まれた。他者の失敗 のもとに自己の成功が成り立つという競争原理のなかで、弱者と共存するという社会科学的思想の発展が遅れた。そしてこれを是正するはずであったいくつもの社会主義国家が破たんした。競争原理は自然科学の領域でも同様で、より便利で効率のよいものを重視し、自然でさえ克服するものであり、自然環境との共存という考えはとり残されてきた。そして日本がめざま しい経済発展をとげて、バブルがはじけるころから、経済基盤から社会の仕組み、政治や教育に至るまでのいろいろなひずみが露呈し始め、今までの価値観 のままではどうにもならないこ とに人々が気付き始めたのであった。 この価値観の転換が、公益的発想である。他人はどうあれ、自分が豊かになることをよしとする自己中心の価値観を転換して、世の中みんなにとっての良い社会とは何か、一人の人間として社会に対して何ができるかを考えるのが公益である。 そして今、山形県内に公益の研究と教育を行う大学が発足する。個人や企業や国の利益をも超える世界的な視野に立つ公益の思想を教育し、これを実践に移すための人材を育てる大学の誕生である。まさに人間尊重と、人間が協力しあう協力社会をつくるという庄内にはじまるルネサンスの幕開けといってよい。 では実際にどのような教育を進めていこうとしているのであろうか。この大学は小人数制教育を行うのが特徴で、基礎科目として公益の歴史や思想を学ぶとともに文章表現と外国語、コ ンピューター利用などのメディ アリテラシー教育が重視され る。公益の思想を通して人の生きる姿勢の基礎をつくるととも に、実務の場で役に立ち、国際社会でも活躍できる人材を育成することに主眼がおかれる。また、専門科目として設定される経営系、社会系、環境系の三つの学習領域は、卒業後の仕事と就職先を視野に入れている。経営系では、公益組織の経営や政策決定や実施に関与する人材を 育成すること、社会系では、福祉、環境、国際協力などのボラ ンティア活動を含む公益活動を実践する人材を育成すること、環境系では、生活環境、自然環境について科学的理解力があり、公益活動を評価できる人材を育成することである。これらの学習領域は、学科とは違い、必要に応じて他の系をも学習できる柔軟なシステムである。たとえば、私自身は生命科学者なので、学生と一緒に研究を進めたいテーマとして、急速に都市化しつつある農村と地方都市の食事と健康と生活習慣病の調査や、医療の実態調査など地域に密着した研究や、発展途上国との共同研究と実体験を通して公益的思想を身につけるよう指導したいと思っている。経済学、社会学、哲学などさまざまな分野の教授による公益学の研究テーマや方法がいろいろと準備されている。この大学での公益学研究や活動は、地域をも包括して進められ、成果は地域社会に還元されるようになっている。 臨界事故による放射能汚染、ごみ処理問題、最近は病院での医療事故と、科学技術に対して不信感を抱かせる事態がたくさ ん発生している。このような事態を改善するには、科学技術の当事者だけではなく、技術を理解し、公益学的な立場から正 しく判断、行動できる人材が必要である、この大学で育った人材が、それぞれの職場で公益 の思想をもとに社会で活躍する時代の到来、それが21世紀である。 |
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